こんにちは、アイオイクス社の石戸(@idist_410)といいます。
普段はアイオイクスのWebコンサルティング事業部で、コンサルタント/セールス/自社マーケティングを担当しています。
Webマーケティングの施策として、SEO(検索エンジン最適化)の実施を検討する際には、知っておくべきことがいくつかあります。
- 自社のマーケティングにおける課題
- SEOの概要
- SEOに向いているビジネス・向いていないビジネス
- プロジェクトにかかる期間・予算・工数
- SEOプロジェクトの進め方 など
多くの場合、SEOは時間も工数もかかる取り組みであるため、実施する前にはできるだけ前提となる知識や条件を揃えておくことを推奨します。
その中でも特に重要なのが、「SEOに向いているビジネス・向いていないビジネス」を知っておくことです。
「SEOは万能であり、SEOで解決できないマーケティングの課題はない」と言いたいところですが、SEOでは解決できない、もしくはSEOがベストな解決策ではないこともあります。
そもそもSEOに向いていないサイトやビジネスであれば、無理に取り組むのではなく、他の効果的な施策に時間やリソースをかけるべきです。
そこで、この記事では「SEOに向いているビジネス・向いていないビジネスの特徴」について、わかりやすく解説します。
SEOの実施を検討する上での参考としていただければ幸いです。
SEOに向いているビジネスの特徴
- 検索需要がある(市場)
- 商材単価が高く、購入時に情報収集を行う(市場)
- 社内にSEOに取り組む体制がある(自社)
- 競合のSEOの取り組みが弱い(競合)
市場・自社・競合の状況を分析することがポイントとなります。
ひとつずつ解説していきます。
検索需要がある
SEOは検索エンジンを活用したマーケティング施策です。
そもそもユーザーが検索する習慣のない商材やビジネスであれば、SEOに取り組んでも効果は出ません。
検索需要があるかどうかは、Googleキーワードプランナーやサジェストの取得ツールを使うことで確認できます。
検索されるキーワードが多く、総合の検索ボリュームが多ければ、検索需要があるといえます。検索されるキーワードが少なく、検索ボリュームが少ないのであれば、検索需要はないと言えるでしょう。
ただし、消費者のほぼ全員がスマートフォンを持ち、検索という行動を自然に行う現在では、検索需要がないものはほとんどないと思います。
例えば、まだ市場にないプロダクトを作り上げるスタートアップは、検索需要がないのでSEOに取り組む段階ではないといえます。
商材単価が高く、購入時に情報収集を行う(市場)
SEOはマーケティング施策のうちのひとつです。当然、投資対効果が求められます。
SEOは半年から1年以上の期間をかけて取り組むものであるため、人的コスト・時間的コストが相応にかかってきます。
そのため、実施するにあたっては、投資対効果(中長期的に見て、投下したコスト以上のリターンが得られるか)を考える必要があります。
そこでポイントとなるのが、「商材単価」と「購入時に情報収集されるかどうか」です。
商材単価
SEOの投資対効果を考える際に、商材単価の高低は非常に重要です。
例えば、商品を単月で100個売るにしても、その商材単価が1,000円なのか、10万円なのかで結果が大きく変わってきます。
- 1,000円×100個=10,000円/月
- 10万円×100個=10,000,000円/月
仮に外部のSEO業者に依頼するのであれば、200万、300万といったコストがかかってきます。また、内製で行うにしても、担当者の人的コストや外注のコストが発生します。
また、1,000円の商品なら簡単、10万円の商品なら難しいといった難易度の違いもあまりありません。
つまり、単価が低い商品はSEOでの投資対効果が悪くなりやすく、単価が高い商品はSEOでの投資対効果が良くなりやすいといえます。
投資対効果は実際に見積もってみないと何とも言えないのですが、「単価いくらの商品をどれだけ売るのか」「SEOにはどれだけのコストがかかるのか」を単純に試算してみると判断できるかと思います。
購入時に情報収集されるかどうか
上の方で「検索需要があるかどうか」というポイントを書きましたが、「購入時に情報収集されるかどうか」という点も同様に重要です。
例えば、普段飲む用のコーヒーと贈り物用の高級なお酒を買う場合を考えてみます。
普段飲むコーヒーを買う場合は、コンビニに入ってドリップコーヒーや缶コーヒーを飲むという買い方で、事前に情報収集をしてから買うといったパターンは少ないと思われます。
一方で、贈り物用の高級なお酒を買う場合は、検索したり人に聞いたりする、もしくはお店に足を運ぶなど、購入までによく情報収集をするケースが多いのではないでしょうか。
中には、「お酒 プレゼント おすすめ」で検索して、表示されたサイトの中から購入するといった購買行動もあるはずです。
つまり、「購入までの検討期間があり、情報収集で検索を活用する商材であれば、SEOに取り組む価値がある」といえます。傾向として、商材単価が高いものに多いです。
補足・注意点
「商材単価が高く、購入時に情報収集をする」という点を踏まえると、以下のような商材を扱っているのであれば、SEOに取り組む価値が高いといえます。
- 導入時の意思決定が重いBtoBのツールやサービス
- 個人の記念日などに贈られるもの(プレゼント・記念品)
- スーパーや雑貨店といったお店に並んでいないもの
また、SEOは今でも効果的な施策のひとつですが、「SEOだけに注力すれば、売り上げが跳ね上がる」といった奇跡は起こりにくくなっています。
あくまでも自社のマーケティング施策全体を俯瞰した上で、「SEOは効果的かどうか」を判断することを推奨します。
社内にSEOに取り組む体制がある
SEOのプロジェクトを進めるには、SEOへの正しい理解とSEOに注力できる体制が必要不可欠です。
例えば、専任のWeb担当者をつけて常にSEO(Webマーケティング)に注力できる体制を構築できれば、成功する確率は高くなります。
一方で、「担当者が営業や事務を兼任しており、注力しきれない」「経営者・上司がSEOの提案をことごとく却下する」という状態では、SEOは失敗します。
自社マーケティングは会社の業績に影響する非常に重要な取り組みです。当然、社を挙げて注力し、実行する体制が必須と言えるでしょう。
競合のSEOの取り組みが弱い
SEOは、相対的な評価で結果が決まります。
例えば、競合他社がSEOにまったく注力しておらず、一般的な認知度も低い状態でSEOに取り組むことができれば、SEOで成果を上げることは相対的に見て容易いでしょう。
(※あくまでも”相対的に”であり、決して簡単というわけではありません)
一方で、競合他社がSEOにかなり注力しており、自社よりも認知度が高い場合、SEOで成果を上げることは困難を極めます。
特に、自社が狙いたいキーワードで大手企業が検索上位を軒並み抑えている場合、新規でSEOに取り組むことは効率が悪く、推奨できません。別のアプローチを検討した方が良いケースが多いです。
補足
ただし、競合の取り組みが強くても、自社のマーケティング戦略上、検索シェアの獲得が重要である事業は取り組んだ方が良いです。
その場合、社内の方針を固め、ある程度予算を確保しておく必要がありますが、社としてSEOに取り組めるのであれば、競合の取り組みが強くても後発で勝てる可能性はあります。
「競合が強い」と一言で片づけるのではなく、自社が抱えている課題や市場のニーズも含めて考えると良いでしょう。
SEOに向いていないビジネスの特徴
SEOに向いているビジネスの特徴を解説しましたが、次はその逆の例をご紹介します。
一部既に解説した箇所もありますが、事例を交えつつ、もう少しわかりやすく解説していきます。
- 検索需要がない(市場)
- 商材単価が低く、購入時に情報収集をしない(市場)
- 社としてSEOに取り組む体制がない(自社)
- 競合がSEOにかなり力を入れている(競合)
- YMYL領域:個人の経済・健康に与える影響が大きい領域(その他)
- 採用目的(その他)
検索需要がない
自社のビジネスに関するキーワードの検索ボリュームが少なく、そもそも検索需要がない場合、SEOに取り組むことはかなり非効率的です。
例え、検索上位を獲得できたとしても、サイトの集客数はすぐに頭打ちになってしまいます。
ただ、現在では検索されない商材というのは稀なので、一度はSEOへの取り組みを検討してみても良いとは思います。
商材単価が低く、購入時に情報収集をしない
生活必需品(日用品)や、工具(ネジなどの細かいパーツ)がこれにあたります。toCの商材が多いです。
日用品であればスーパーやコンビニ、もしくはAmazon・楽天で買うでしょうし、工具はホームセンターや業者からの直接買い付けを行うことが多いでしょう。
人々が単価の低い商品を購入するとき、「検討」というプロセスの時間はないか、もしくは非常に少ないと考えられます。
SEOは「検討」という段階において強く効果を発揮します。
「検討されない商材」をSEOを使って売り、うまくリターンを得ることは難しいのです。
強いて言うのであれば、SNSマーケティングなどのバイラル(口コミ)マーケティングの活用を検討するのが良いと思います。
社内にSEOに取り組む体制がない
SEOの取り組みを、社内の協力なしで成功させることは困難です。
- SEOへ十分なリソースが投下できない(予算・実装コストなど)
- 経営者・上司が担当者の提案をことごとく却下する
- SEOの方針がコロコロ変わる
このような状態では、SEOへの取り組みはまず成り立ちません。失敗する可能性が非常に高いです。
ただし、SEOへの理解を社内の自主性に求めるのは、いささか酷であるといえます。
もし、SEOに取り組むのであれば、発案者が担当となり、責任を持って進める必要があります。
ゴールのないマラソンは誰しもが辛く感じるものです。社内の協力を取り付ける上では、期間を決めて注力するのが良いでしょう。
競合がSEOにかなり力を入れている
競合他社がSEOにいち早く取り組んでおり、既に検索上位を抑えているのであれば、SEOの新規注力は厳しいものとなります。
基本的にマーケティング施策は早く取り組めば取り組むほど成果が出やすく、競合他社に抜かれにくくなります。いわゆる先行者利益です。
一方で、競合が既に取り組んでいたとしても、コンテンツの質やリソースの投下量で上回れるのであれば、後発でも取り組む価値はあります。
SEO(Webマーケティング)は常に今がチャンスであり、取り組むべき時期なのです。機を逸しないようにしましょう。
YMYL領域:個人の経済・健康に与える影響が大きい領域(その他)
金融・医療・健康・美容など、個人の経済や健康に与える影響が大きい領域をYMYL領域といいます。
YMYLとは、Your Money or Your Life(お金や生活)の頭文字をとったもので、Googleが公式に使っているワードです。
PQ(Page Quality: ページ品質)が特に重要なページもあります。このようなページをYour Money or Your Life(お金や生活) 、YMYLと呼びます。
YMYLは、現在あるいは将来の幸福や健康的な生活(身体的、経済的、安全性など)に大きな影響を与える可能性があるページです。
YMYLページは、信頼できるサイトに掲載されるべきで、そのコンテンツは高度な専門性と権威とともに作られていなければなりません。
医療機関(病院・クリニック)や求人、個人のお金(財務)に関するビジネスはYMYL領域に該当します。
例えば、「医療機関がSEOで順位を上げたい」と思っても、狙いどおり順位を上げることは非常に困難です。指名検索(固有名詞の検索のこと)ですら、検索結果に表れないことがあります。
なぜ、YMYL領域に取り組むことは推奨されないのか。その理由は、E-A-Tという概念にあります。
E-A-T(専門性・権威性・信頼性)
YMYL領域では、E-A-Tという概念が重要されます。
E-A-Tとは、以下の3つの要素を総称したものです。Google公式のワードとなっています。
- Expertise:専門性
- Authoritativeness:権威性
- Trustworthiness:信頼性
以下に、E-A-Tの説明を引用します。
E-A-Tとは、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の3つの概念の略である。Google が作成した「検索品質評価者向けガイドライン」では、E-A-Tについて「3.2 専門性・権威性・信頼性(E-A-T)の詳細」を始めとした、多くのページで、説明している。
あるWebサイトのE-A-Tを判断する際には、ページとコンテンツのタイプ、コンテンツの作成者、Webサイトの運営者情報、Webサイトの評判など、全てを参考にする。 E-A-T は、Google がWebサイトやページの品質を評価する時に使う評価軸である。E-A-Tが高ければ、そのWebサイトやページの品質評価が高まり、検索結果の表示順位への影響も考えられるため、SEOの観点からも重要な概念である。
E-A-Tはすべての検索結果において重要な評価指標のひとつですが、YMYL領域ではさらに重視される傾向にあります。
E-A-Tを高めるためには、「SEOだけの施策」では難しく、総合的なマーケティングの観点から「いかに社会的な信頼を得るか」という考え方が必要になります。
そのため、そもそもSEOに取り組んでいないビジネスが、新規でYMYL領域のSEOに参入することは難しく、総合的に見ると推奨できないのです。
採用目的
「社員を採用するにあたり、求人サイトへの広告費が高いので、SEOでコストを削減したい」というお問い合わせを受けることがあります。
しかし、採用目的でSEOに取り組むことは推奨できません。
なぜなら、サイトの順位を上げたからといって、求人の応募は来ないからです。
例えば、「営業 売れない」「テレアポ コツ」といったキーワードで上位を取ったとしても、そこから採用に繋がる可能性は限りなく低いです。
- ユーザーとしては、上位に表示されているサイト名や、運営会社に興味を持っていない
- 企業としては、売れない営業を採用したくない
普段、検索をしていて、「この記事を書いた運営会社は〇〇なのか」と意識する機会はほとんどないと思います。
それと同じで、「転職したい」と思っているユーザーも普遍的な記事の運営会社を調べ、なおかつ求人にまで応募するケースはかなり稀です。
可能性としてはゼロではありませんが、期待値が低すぎるため、SEOに投資したところで回収できる見込みは薄いです。
求人に応募する可能性が高いのは、会社名で検索する「指名検索」ですが、指名検索を増やすならSEOよりSNSに注力した方が良いでしょう。
SNSに注力した結果、SEOでも成果が上がるといった事例はよくあります。求人広告やSEOといった施策単位でコストを下げようとするのではなく、自社の採用戦略全体で考えてみると良いと思います。
まとめ
最後にSEOに向いているビジネス・向いていないビジネスを改めてまとめます。
SEOに向いているビジネス
- 検索需要がある(市場)
- 商材単価が高く、購入時に情報収集を行う(市場)
- 社内にSEOに取り組む体制がある(自社)
- 競合のSEOの取り組みが弱い(競合)
SEOに向いていないビジネス
- 検索需要がない(市場)
- 商材単価が低く、購入時に情報収集をしない(市場)
- 社としてSEOに取り組む体制がない(自社)
- 競合がSEOにかなり力を入れている(競合)
- YMYL領域:個人の経済・健康に与える影響が大きい領域(その他)
- 採用目的(その他)
マーケティング施策を行う上では、リソース配分の最適化が非常に重要です。
かけられる時間も予算も無限ではありません。「SEOをすれば」「広告を出せば」という近視眼的な考えに陥ることなく、「何にどれだけ投資すれば、最大限の効果が得られるのか」を考慮する必要があります。
また、SEO・広告・SNSと、それぞれへの取り組みが相互に作用するといったケースも少なくありません。
もし、SEOへの取り組みを考えるのであれば、一旦自社のマーケティング戦略を俯瞰した上で、「SEOにどのような役割を持たせるのか」を整理してみてはいかがでしょうか。
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